は?でも感謝してるよ

「素の自分を見せてほしいな」

 先日,とある友人からそう言われた。会うまでは,かっこいい,クールな人だって思っていたらしいけどあってみたら意外とかわいい感じだったそうだ。

 「イメージだけど,あらやしき君は普段は実は甘える人なんじゃないかな」

 「そうだね,確かに犬っぽいとたまに言われる。あと,企画だけして詳細な計画はあんまりしなかったりもしたかも」

 「察した察した(笑)」

 

 そういわれてからしばらくの間,私はその友人の顔をまともに見て話せなかった。

 

 色々な感情が私の中で渦巻いていた。

 「お前なんかに,俺の素をさらけだしたとして,何が分かる?」

 「お前は恵まれた家庭環境で育ち,豊かな愛情を受け,適切な教育を受けた。その一方で私は,不適切な教育を受けて育ち,馬鹿な大人たちのおかげで自分の誤った道をそのまま歩み続けた。それもあるし,もう元には戻せないくらい,生来あるといっても過言ではないクズの性質を持っている。そんなもの,お前らに見せて何の得がある?」

 

 私のうわっつらだけを見て,それを賞賛する奴ら。私の落ち着いた声,性的に魅力のある声。それに,高い身長にある程度異性を喜ばせることのできる能力。快活であり,自信家。それが貴様らの見ている私の姿だ。そして,勝手に崇め,中身を見ると勝手に幻滅するのだ。それなのに「素を見せてほしい」??

 

 素とは何だ?俺の本当の性格か?俺は,恵まれた環境でのうのうと暮らし,社会に子孫を残すという形でしかほとんど次世代に貢献しないやつらが心底嫌いだし,にくいし,うらやましい。だから,俺の機嫌が悪ければ,そういう奴らを見ると壊したくなる。この世には,お前らが想像できるよりはるかに苦痛なことが,身体的にも肉体的にもあるのだぞ,と。

 

 WEB検索で,「素を見せない 特徴」で調べると,自信がないことが1つに挙げられていた。確かに,私は部分的には自信がない。社会的に凡てを受容されるような性格を持っていないことは自分でも分かる。しかし,スキルとか能力とか胆力とか,アイディアとか,子どもに対する愛情深さは,卓越したものを持っている。最近は,プライドを自分で折ることも覚えたし,それで成長できるってことも知れた。私は今の自分に自信を持っている。だが,自信がないことも確かだ。

 

 じゃあ,どうすればいい?俺は健常者になれば解決するっていうのなら,その方法を教えてくれよ。ドタキャンをしないようにどうすればいいか,教えてくれよ。ネットで調べても,ふんばっても,上手くいかなかったら?誰が責任取るんだ?親?二度と会いたくない。ああいう生物として欠陥のあるやつらと過ごしていたら,こっちまで頭がおかしくなる。

 

 別に悔しさなんて感じない。俺はこういう風に生きてきた。それで,俺と同じスタートラインに立っていた奴らに比べると,社会的にもほとんど成功している。

 

 でもさ,やっぱり,旨くいかないなってこともあるんだよ。今日だって,サークルに行こうと思ってたのに,結局行かなかった。メンバーと連絡とるまで,もうサークルやめようか迷ってたくらい。でも,ここでやめたら一生後悔するって思ったり,もっと恥ずかしいことになるから,次は絶対行くと思う。

 

 編入のときもそうだったな。背水の陣ってやつだった。

 NGY大学を受けてうかったのも,俺には退路が経たれていたからだと思う。当時は必修単位を3つくらい落としていたし,サークルにも殆ど顔を出さなかった。チームからも除外されていた。だからこそ,ここでやらなきゃやばいって思って必死にやっていたんだと思う。OSK大学は,そうだな,馬鹿にされるって意識もあったし,落ちたらね。あとは,当時恋してた子のおかげも大いにある。

 

 そういえば,就活が上手くいったのは,見栄とかじゃなくて,純粋に当時の彼女と一緒に過ごしたかったっていう思いが強かったからなんだよね。多分。内定もらったときは死ぬほど喜んだな。

 

 俺はさ,きっと不器用な人間なんだよ。クズではない。不器用なの。不器用って言葉は,にくい元カノが使ってたから,それも外へのアピールのために使ってたから嫌いなんだけど,不器用なんだよ。俺の両親と似てて。いや,もしかしたら人類みんな不器用なのかもしれない。どこかしら,得意なこともあるし,苦手なことがある。積極的に苦手に取り組もうとする人間なんてめったにいないと思う。それなのに,俺は結構立ち向かってる。それだけで偉くないか?

 

 は?と思ったけど,感謝はしてるよ

 去年はインターンで「完璧主義すぎるところがあると思います」と言われたのがかなりショックで,でもきちんとそれに向き合うようにはなったし,「あらやしきくんは何か言われるのが嫌なんや」と先輩のカス社員に言われたのも嫌やったけど,ずっと心に残ってた。高校の頃,顧問から「お前はプライドが高い」と言われたり,「あらやしきは練習が嫌いっぽい」とサークルのメンバーから言われたこと,ぜんぶぜーんぶ俺の心にもやもやとして残り続けた。それは多分,図星だったからだろうな。

 

 言われた瞬間,「は?お前に何が分かんねん」って思うけどさ,でも大体,図星なんだな。そして,改善すべきところなんだな。他の人に行ってもらわないとなかなかきづけねんだわ。だから,言ってくれた人には感謝すべきなんだわ。

 

 あー。なんやねんくそがって言いたくなるけど,でも,ありがとう。

 

 ちょっとずつでいいかな。前に進むの。