『愛するということ』 書評Part1

『愛するということ』by ユーリッヒ・フロム

 

こちらの著書を、先日読了した。衝撃の一冊であった。

私がこれまでの人生経験から感覚的に示唆されていた、真理が明確に言語化されているではないか。それだけではない。人間の真の幸福を私が知悉していないことと、それによって人間的に未熟であるということと、その原因について、見事に理論的に説明している。

 

私の今迄の人生のハイライトをしてくれた本でもある。

 

この本を受けて、私が感じたことや考えたことを備忘録的にこの記事に残したいと思います。


1.それまでの孤独の程度が、恋の思いの強さに反映される

恋愛とひととくりにいうものの、愛と恋はまるで別物である。

恋とは、孤独が強ければ強いほど陥りやすく、愛とは逆に孤独からは生まれず、自分と、そして他人への思いやりや一体感の集合体的感覚である。

私も思い返せば、恋に落ちたというときは著しく孤独感を覚えていた。そして今、愛する彼女ができてからは孤独とは無縁になり、したがって恋に落ちるということもなくなった。

このことからわかるのは、いわゆる恋に落ちて浮気に走ってしまうことの原因は、愛の関係で結ばれていないということだ。私の昔の大きな間違いとして、パートナーが浮気に走って私が捨てられてないようにするために、相手がほかの人間と恋をしないような容姿や性格を持つ女性を求めていた。しかし、浮気に走るかどうかは、その相手自身の問題でもなく、私とそのパートナーとの集合体的感覚がともに築けているかどうかによるのだ。

 

2.愛は技術である~配慮~

母親からの「愛」に対する私の考えを、見事に全肯定してくれた一節がこちらである。「愛とは、愛する者の生命と成長を積極的に気に掛けることである」

私の母親はASDらしい性格であり、子供である私の意を正確に読み取り、そして対処することがなかった。しかし、母親はそれでも私を愛していると何度も言った。私は、そんなものは愛ではないと強く思った。愛するためには、きちんと愛を届けるためには、それなりの振る舞いすなわち技術が必要であると、子供のころから思っていたのだ。しかし、愛について語れる相手などもおらず、また、自分の言語的能力も乏しいことから、このもやもやした信念が心の奥底に埋没していたままであった。

しかし、この一節を読んで私は救われた。愛は技術である。

そして、技術であるということは、今、愛することができない人間にとって朗報でもあるだろう。

 

3.「子供は母や父を自分のなかに取り込むのではなく、自分自身の愛する能力によって母親的良心を築き、理性と判断によって父親的良心を築き上げる」

私の母親は、母性的能力が欠けているし、父親に至っては父親的良心もかけている。正直、親としての役割は殆ど果たせていないように思える。そんな親を持ってしまった私は、一生、正常な親の役割を学ぶことができず、不健全な家庭を築くことしかできないのかと絶望に打ちひしがれることもあったが、この一節はその不安を取っ払っている。

 

4.甘く支配的な母親と無関心な父親を持った子供は、大人になっても世界やあらゆる人に「母親」を探す

前の写真の後半からの続きである。

これはまさに私をずばり言い当てた一節である。男性だろうと女性だろうと、目上の人だろうと目下の人だろうと、母親的側面がある人を好み、また、そうでない人を忌み嫌ってきた。別のアダルトチルドレンの本では、甘えられる人には甘える、そうでない人には甘えない、といったように、すぐに自立するのではなく段階的に自立していくという解決策が挙げられていた。

私は、多分無意識にずっとあらゆる人に「母親」を探して、引き出そうとするだろう。だからこそ、この指摘は毎朝毎夜、心に唱えて自覚したいと思う。

 

5.「乳と蜜」の両方を与えられる母親

母親は乳と蜜を与える。いや、子供の健全な発達のために与えるべきである、というのが正しいか。生育のための物理的な環境を与えることは、まあ現代ならクリアできるだろうが、人生の甘美さや生きていることの幸福を伝えられる母親はどれくらいいるのだろうか。私自身も、母親の厭世的な態度や、無力感、低い自己肯定感の低さ、それに裏付けされている脆い自尊心が、少なからず影響していることだろう。

「他人を幸せにするためには、まずはあなた自身が幸せになれ」というのは、こういうことも関係しているだろう。本当に良いことを書いている、この本は。

 

6.超越の欲求。男と女の満たし方の違い

こちらは非常に興味深い解釈であり、私自身の欲求をより深く考察する材料となった。

人間には創造したい、神を超越したいという欲求があり、女性は子供を産み愛して成長させることで、男性は人工物や思想を生み出すことで満たすということだ。私はIoTないし人工物が、人間の認識や思想や意思決定に影響をおよぼす現象に、大学生のころから強く惹かれ、そして今の自分自身のキャリアパスに大きく影響を与えている。

 

7.「一者」の一部である私を愛し、相手を愛するがゆえに、誰を愛するかは問題ではない

この前、元カノにこの一節の考えを伝えることを試みたが、うまくいかなかった。この一節の考えには全面的に、感覚的にも同意する。しかし、あくまでも私やこの著者の考えにすぎず、全人類があてはまるかどうかは分からない。しかし、私は確かに、本質的に人間は、愛の観点では同じであるから、愛するという行為についてはみな等しく同じであると考えている。

 

8.利己主義と自己愛は異なる

 

9.現代西洋社会における「正常な」愛の姿とその正体